原文で読んでみよう 『平家物語』横田河原合戦一

同じき九月二日、城四郎(じやうのしらう)長茂(ながもち)、木曾追討のために、越後、出羽、相津(あひづ)四郡の(つはもの)どもを引率して、都合其勢四万余騎、木曾追討のために信濃国へ発向す。同じき九日、当国横田河原に陣をとる。木曾は依田(よだの)(じやう)にありけるが、これを聞いて依田城をいでて三千余騎で馳せ向かふ。信濃源氏、井上九郎光盛がはかり事に、にはかに赤旗を七ながれつくり、三千余騎を七手にわかち、あそこの峰、ここの洞より、赤旗ども手々にさしあげて寄せければ、城四郎これを見て、「あはや、この国にも平家の方人する人ありけりと、力つきぬ」とて、いさみののしるところに、次第にちかうなりければ、合図をさだめて、七手が一つになり、一度にときをどッとぞ作りける。 用意したる白旗ざッとさしあげたり。越後の勢どもこれを見て、「敵何十万騎あるらん。いかがせん」と色を失ひ、あわてふためき、或いは川におッぱめられ、或いは悪所に追い落とされ、助かる者は少なう、討たるる者ぞおほかりける。(巻六・横田河原合戦)

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