原文で読んでみよう 『平家物語』巻六 飛脚到来(冒頭)

木曾といふ所は、信濃にとッても南の端、美濃ざかひなりければ、都も無下にほどちかし。平家の人々もれきいて、「東国のそむくだにあるに、北国さへこはいかに」とぞさわがれける。入道相国仰せられけるは、「其者心にくからず。思へば信濃一国の兵共こそしたがひつくといふとも、越後国には余五将軍の末葉、城太郎助長、同 四郎助茂、これらは兄弟共に多勢の者共なり。仰せくだしたらんずるに、やすう討ッて参らせてんず」と宣ひければ、いかがあらんずらむと内々はささやく者もおほかりけり。(巻六・飛脚到来)

木曽という所は、信濃にとっても南の端、美濃国との境なので、都にひどく近い。平家の人々は義仲挙兵のうわさを聞いて、「東国がそむくだけでも大変なのに、北国までもそむくとは、これはどういうことなのか」と騒いだ。入道相国は、「その義仲という者のことは、気にしなくてよい。思うに、信濃一国の武士たちが従っているといっても、越後国には余五よご将軍の末裔、城太郎助長、同四郎助茂がいる。これらは兄弟ともに大勢の武士を配下にしている者たちだ。命令を下したら、簡単に討ちとってしまうだろう」とおっしゃったが、いったいどうなるのだろうと内々にささやく者は多かった。

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